令和2年7月豪雨球磨川水害伝承記

後代に残す記録

復興に向けての取り組み

5.河川・道路・砂防の本復旧等

(1) 河川

1) 堤防決壊箇所の復旧状況

国管理河川では、令和2年7月豪雨により堤防が決壊した2箇所、及び護岸等の被災29箇所の災害復旧工事を実施しました。

このうち、堤防が決壊した球磨川左岸55k000(人吉市中神町)については令和3年3月16日に本復旧工事に着手し、5月24日に本復旧が完了しました。 また、同じく堤防決壊が発生した球磨川右岸56k400 (人吉市中神町)では、令和3年2月2日に本復旧工事に着手し、5月31日に本復旧が完了しました。

堤防決壊箇所位置図

堤防決壊(球磨川左岸55.0k付近) 堤防表の川側

本復旧作業中(令和3年4月7日)

本復旧完了(令和3年5月24日)

堤防決壊(球磨川右岸56.4k付近) 堤防の居住地側

本復旧作業中(令和3年4月21日)

本復旧完了(令和3年5月31日)

2) 堆積土砂の掘削状況

国管理河川では、出水期前までに掘削を予定していた約70万m3の掘削を、令和3年5月末までに完了しました。引き続き、堆積土砂の掘削を推進しています。

堆積土砂掘削箇所位置図

施工前状況
①荒瀬地区(令和3年1月)

施工後状況
①荒瀬地区(令和3年5月)

施工前状況
②神瀬地区(令和3年1月)

施工後状況
②神瀬地区(令和3年4月)

施工前状況
③人吉市(令和3年2月)

施工後状況
③人吉市(令和3年4月)

施工前状況
④湯前町(令和3年1月)

施工後状況
④湯前町(令和3年3月)

3) 排水施設の復旧状況

令和2年7月豪雨により、国が管理する渡第三排水樋管(球磨村渡)と八田排水樋管(相良村柳瀬)の2箇所が門柱の倒壊等により機能が停止し、応急復旧による仮設ゲートで逆流防止を図っていましたが、令和3年5月31日に排水樋管本体が復旧し、ゲートの据付が完了しました。

排水樋管位置図

①渡第三排水樋管(球磨川右岸53.3k付近)

②八田排水樋管(川辺川右岸0.5k付近)

4) 水位観測所と河川監視カメラの復旧

❶水位観測所の復旧

被災した全35箇所の水位観測所(水位観測所5箇所、危機管理型水位計30箇所)については5月末に復旧を完了しました。復旧とあわせて、令和2年7月豪雨が再度発生した場合でもデータ通信が途絶するリスクを低下させるために通信経路の見直し(浸水区域を避ける経路に変更)を実施しました。

❷河川監視カメラの復旧

被災した全38箇所の河川監視カメラ(CCTVカメラ28箇所、簡易型カメラ10箇所)については3月までに復旧を完了しました。復旧とあわせて、令和2年7月豪雨が再度発生した場合でも映像通信が途絶するリスクを低下させるために伝送ルートの二重化を実施しました。今後は、応急復旧したカメラの機能向上(夜間視認性向上等)等に取り組んでいきます。

(2) 道路

1) 鎌瀬橋、坂本橋、相良橋の仮橋設置

八代復興事務所では、八代市から人吉市間の国道219号ほか県道等や、流失した橋梁10橋を含む約100kmについて、国の権限代行により道路や橋桁撤去等の復旧工事を進めています。

このうち相良橋は令和3年5月21日、鎌瀬橋と坂本橋は令和3年5月28日に仮橋ガーダー橋が開通し、通学路や生活道路としての機能が回復しました。

河川の治水計画に合わせた道路全線の早期復旧に向け、引き続き取り組んでいきます。

国道219号 鎌瀬橋

【被災状況概要】

上部工:A1~A2間 約113.2m流失

被災前の状況(令和2年6月3日時点)

被災後の状況(上部工A1~A2間流失)

仮橋完成

坂本人吉線 坂本橋

【被災状況概要】

上部工:A1~A2間 約121.1m流失(車道橋・側道橋共)

被災前の状況(平成元年10月時点)

被災後の状況(上部工A1~A2間流失)

仮橋完成

県道325号 遠原渡線 相良橋

【被災状況概要】

上部工:A1~A2間 約110m流失(車道橋)

被災前の状況(平成15年3月時点)

被災後の状況(上部工A1~A2間流失)

仮橋完成

2) 緊急避難施設の整備

南九州西回り自動車道は熊本県八代市を起点とし、鹿児島県鹿児島市に至る全長約140㎞の主要幹線道路です。災害直後から避難・救助をはじめ、物資供給等の応急活動のために緊急車両の通行を確保すべき重要路線である第一次緊急輸送道路にも指定されており、熊本県側の約50㎞、及び県境~出水IC間の鹿児島県側の約8㎞については、八代河川国道事務所が整備を担っています。

南九州西回り自動車道 全体位置図

この南九州西回り自動車道の熊本県葦北郡芦北町花岡地区において、防災・減災対策を行うこととし、予測浸水深よりも高い位置に整備されている直轄国道の高架区間等を緊急避難場所として活用するため、避難施設等の整備を実施します。

この整備により、津波や洪水が発生した際に、緊急避難場所の確保を図ることが可能となります。

花岡地区 位置図

道路区域に設けられる緊急避難施設のイメージ

(3) 砂防

1) 河川護岸や砂防施設の整備

令和2年7月豪雨により、球磨川支川川辺川の四浦水位観測所において氾濫注意水位を超え、洪水により川辺川支川五木小川における河川護岸3箇所において被災が発生しました。被災直後に応急復旧を実施し、令和3年度には本復旧を実施予定です。

五木小川右岸0k200付近

五木小川左岸0k700付近

五木小川右岸0k800付近

また、今回の豪雨では土石流危険渓流に設置した砂防堰堤により大量の堆積土砂等が捕捉され、家屋等の保全対象施設が土砂災害から守られたことが確認されましたが、次期出水(台風期)を迎えるにあたり、砂防堰堤の捕捉容量を確保するため7箇所の砂防堰堤の「緊急除石工事」で約10,000m3の除石を実施しました。

今後も引き続き除石や施設の補修などを進めるとともに、球磨川水系流域治水プロジェクトのメニューとして砂防施設の整備を推進します。

西の内谷川第3砂防堰堤(堰堤高8.5m、堰堤長48.5m)

出水直後

除石完了(約3,600m3

椎葉谷第2砂防堰堤(堰堤高14.5m、堰堤長83.0m)

出水直後

除石完了(約1,700m3

(4) 団体・企業からの支援

小型発動発電機の寄贈

国土交通省では令和2年以降を「道の駅」第3ステージとして位置づけ、災害発生時における地域の防災拠点となる「道の駅」については防災機能を強化するため、耐震化や無停電設備などの施設整備を推進しています。

その一環として、10月21日に(一社)日本道路建設業協会九州支部より小型発動発電機が「道の駅 坂本」設置者である八代市へ寄贈されました。

道の駅 坂本への小型発動発電機寄贈式
左より順に、熊本県土木部道路都市局道路保全課長、(一社)日本道路建設業協会九州支部長、八代市副市長、八代河川国道事務所長

令和2年7月豪雨災害復旧等支援活動功労感謝状の贈呈

八代河川国道事務所及び、川辺川ダム砂防事務所では、令和2年7月豪雨災害に際し、昼夜を問わず災害復旧活動や資材運搬作業等の活動にご尽力いただいた企業の皆さまに対し、感謝状を贈呈しました。

【感謝状贈呈企業数】

  • 八代河川国道事務所関係 56社
  • 川辺川ダム砂防事務所関係 12社

令和2年度水防功労者国土交通大臣表彰・九州地方整備局長表彰

令和2年7月豪雨に際し、球磨川流域において水防活動とともに、河川等の警戒巡視、住民の避難誘導や救助を行い、人命の安全確保と被害の軽減に多大な貢献をされた団体又は個人が表彰されました。

国土交通大臣表彰 5団体

  • 八代市消防団
  • 人吉市消防団
  • 芦北町消防団
  • 相良村消防団
  • 球磨村消防団

九州地方整備局長表彰 2名

  • 一橋 國廣(人吉市中神町字大柿 町内会長)
  • 西村 俊則(相良村十島区 班長)

球磨村での表彰伝達式
左より順に、八代河川国道事務所長、球磨村消防団長(松野三千夫氏)、球磨村長

人吉市での表彰伝達式
左より順に、人吉市長、人吉市中神町字大柿 町内会長(一橋國廣氏)、八代河川国道事務所長