九州地方整備局では7月3日15:40に災害対策本部を設置、注意体制(風水害)を発令し、同日23:15には警戒体制、7月4日3:50に非常体制を発令しました。
また、7月4日3:30に災害等支援本部警戒体制を発令し、リエゾン派遣の準備を開始しました。
災害対策本部では、被災状況の把握、応急・緊急復旧とその進捗、自治体支援等状況等、災害対応の局面に応じた情報を共有し、対応に必要な判断や調整を行いました。
九州地方整備局では、球磨川流域自治体の防災対応に資する気象警報や各種警戒情報などの情報提供を行い、住民の安全を確保するため、河川関係事務所長等から球磨川流域の12市町村に対するホットラインを実施しました。
また、気象警報や指定河川洪水予報、土砂災害警戒情報は、洪水情報のプッシュ型配信(受信者側が要求しなくても発信者側から情報が配信される仕組み)により、球磨川水系で緊急速報メールを12回配信したほか、国(気象台)の防災情報提供システムや県の防災情報ネットワークシステム等を活用し、住民にはテレビ、ラジオ、Webサイト、メール等の手段によって伝達されました。
国の避難勧告ガイドラインに沿って定めたタイムライン(防災行動計画)をそれぞれ運用する人吉市、八代市、球磨村、熊本県と八代河川国道事務所、熊本地方気象台等は7月3日16:00、オンライン会議を行い、気象・河川の予測情報等の共有をすることで、危機感を共有しました。
球磨村では3日17:00に「避難準備・高齢者等避難準備開始情報」を出し、避難所を開設し、早期避難を呼び掛けることができました。
その後も防災行政無線や地域の自主防災組織等による避難の呼びかけに加え、町内会長や区長、民生委員等による要支援者の避難支援など、タイムラインに沿って行動し、住民の迅速な避難誘導に役立てました。
被災状況の把握や被災した自治体の支援を行い、被災地の早期復旧のための技術的支援を迅速に行うため、九州地方整備局を中心に全国から広域派遣されたTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)が7月4日に活動を開始しました。8月4日までのおよそ1ヶ月間にわたり、のべ6,932名のTEC-FORCEが、河川・道路の被災状況調査や排水作業等を実施しました。
球磨川流域で活動したTEC-FORCEは、先遣隊、先遣調査班、河川班、道路班、砂防班、応急対策班、現地支援班、情報通信班、港湾班と多岐にわたり、1日最大で広域派遣の205名、及び九州地方整備局の61名の総勢266名が活動しました。
先遣調査班による人吉市での聞き取り(7月6日:中国TEC)
先遣調査班による津奈木町の被災調査(7月7日:近畿TEC)
先遣調査班から後続調査班へ調査箇所説明(7月8日:近畿TEC)
相良村長との被災調査箇所打ち合わせ(7月9日:東北TEC)
被災状況の調査を行った箇所は合計1,713箇所(河川351箇所、道路1,266箇所、砂防96箇所)にのぼり、球磨村や八代市の要望を受け孤立集落へのアクセスルート調査も実施しました。7月27日からは調査後の降雨による新たな被災や増破の確認調査も行い、激甚災害の早期指定や災害申請の円滑化にも貢献しつつ、8月3日までに全ての被災自治体へ調査結果の報告を終えました。
人吉市長への調査報告(7月14日)
五木村長への調査報告(7月18日)
また、7月4日から物理的に役場庁舎へのアクセスが不可能となった球磨村には、10日に衛星通信車と災害対策本部車を球磨村総合運動公園・さくらドームに仮設設置し、本部指令や情報共有会議などを行う拠点として有効活用しました。なお球磨村の役場庁舎は、7月23日に業務を全面再開しました。
衛星通信車(球磨村総合運動公園)
衛星通信車の設営(球磨村総合運動公園)
災害対策本部車(球磨村総合運動公園)
関係機関が集い災害対策本部車内で情報共有会議
球磨川流域等の3市6町5村から災害復旧等の支援に関する相談を受け付け、九州地方整備局への伝達などを行うとともに、迅速かつ的確な災害対策及び災害支援を実施するリエゾン派遣を7月4日から開始しました。
7月24日までの20日間にわたり、各種会議に参加して情報共有を進めるとともに自治体からの要望を確認し、災害対策用ヘリコプターや排水ポンプ車、照明車、路面清掃車等の派遣調整や支援事項の調整を行いました。
球磨村にて被災状況確認
芦北町にて情報共有会議へ参加
球磨村長への孤立集落解消に向けた取組みの説明
五木村にて情報共有の会議へ参加
山江村にて支援物資の受け入れ
あさぎり町長からの要望聞き取り
自治体 | 期間 |
---|---|
熊本県庁、人吉市 | 7/4~8/31 |
八代市 | 7/4~8/7 |
芦北町 | 7/4~8/3 |
五木村 | 7/4~7/21 |
水俣市 | 7/4〜7/8 |
湯前町、山江村 | 7/5~8/4 |
球磨村 | 7/6~8/31 |
相良村 | 7/7~7/17 |
あさぎり町、錦町 | 7/8~8/4 |
多良木町 | 7/10~8/4 |
水上村 | 7/10~7/15 |
津奈木町 | 7/10~7/29 |
球磨川流域の被災状況や堤防決壊箇所を確認するため、九州地方整備局が保有する災害対策用ヘリ「はるかぜ号」が7月4日から上空調査を開始しました。
7月17日には熊本県職員が搭乗し、県管理の球磨川支川及び斜面崩壊状況等を確認し、地上では球磨村職員が調査箇所の指示なども行いました。
7月31日には球磨村建設課長等6名が搭乗し、球磨村内の被災状況を調査したほか、球磨村役場では村長がモニターで被災状況を確認しました。
災対ヘリ「はるかぜ号」が上空調査に向け離陸(7月4日13:00)
球磨川支川 市之俣川(八代市坂本町中津道)
被災状況調査を行う球磨村建設課長等6名
球磨川56k400付近の堤防決壊箇所(7月4日撮影)
芦北町伏木氏(7月4日撮影)
ヘリからの映像を見ながら球磨村職員が調査箇所等を指示
また、「はるかぜ号」の映像は国土地理院にリアルタイムで配信され、浸水エリアの速やかな解析や、浸水深を濃淡で示した浸水推定図の作成に役立てられ、現地TEC-FORCEの被災状況調査にも活用されました。
九州TEC-FORCE情報通信班は、監視不能となった河川管理用CCTVカメラ23台(流失2、浸水16、通信回線切断5)及び光ケーブル断線15箇所の被災状況を調査しました。緊急性の高い7箇所を7月6日までに応急復旧させ、監視映像を被災自治体へ配信しました。
また、災害復旧活動中の事務所に情報通信班の隊員を派遣し、早期に設備復旧するため技術検討作業を支援しました。
被災状況調査(八代市坂本町 鎌瀬橋カメラ)
CCTVカメラ応急復旧活動(球磨村渡 地下排水樋管)
自治体への映像配信(人吉市役所)
九州地方整備局と福岡管区気象台では、大雨による災害のおそれや河川・被害の状況、今後の気象状況等について、適時適切な情報をいち早く発信し命を守る早期の行動につなげるため、7月4日から9日までの6日間で計8回の合同記者会見を実施しました。
日時 | 会見概要 |
---|---|
7月4日05:30~ | 球磨川の状況と今後の大雨の見通し |
7月4日010:30~ | 被害状況と河川の今後の見通し |
7月5日015:00~ | 今後の大雨の見通しと被害状況 |
7月6日014:00~ | 今後の大雨の見通しと被害状況 |
7月6日018:00~ | 大雨特別警報発表(福岡県、佐賀県、長崎県) |
7月7日009:00~ | 筑後川下筌ダムの異常洪水時防災操作を検討 |
7月7日11:30~ | 大雨特別警報の警報等への切替と今後の見通し |
7月9日14:00~ | 今後の大雨の見通し、河川の水位等の状況 |
福岡管区気象台と合同で記者会見(7月4日05:30)
福岡管区気象台と合同で記者会見(7月4日10:30)
道路被災(規制)情報を提供
福岡管区気象台での合同記者会見
なお、新型コロナ禍における「新しい生活様式」を取り入れて、気象台のTV会議による解説や、在福岡民放TV局5社のカメラクルーによる撮影等、密集状態を回避する取り組みを行うとともにYouTubeによる生配信も行い、地方ケーブルTV局でも活用されました。
TBS公式YouTubeで動画配信
民放5社の代表(共同)カメラにより密集回避
TV会議による気象台の解説
7月5日、武田内閣府特命担当大臣(防災)が、熊本県内の被災地を視察しました。九州地方整備局及び八代河川国道事務所の職員等が、浸水が発生した人吉市の被災箇所にて被害状況を説明しました。
球磨川の浸水現場(人吉市九日町)
球磨川の浸水現場(人吉市九日町)
また、7月15日から16日にかけては赤羽国土交通大臣が、熊本県及び福岡県の被災地を視察しました。九州地方整備局及び八代河川国道事務所の職員等とともに、球磨村渡地区の氾濫箇所を視察し、球磨村と意見交換を行ったほか、人吉市で流失した西瀬橋や産交バス人吉営業所、八代港を視察し、熊本県及び人吉市とも意見交換を実施しました。また、TEC-FORCEも激励を受けました。
赤羽国土交通大臣による全国から集結したTEC-FORCEへの激励
球磨川氾濫箇所(球磨村渡地区)
被災した産交バス人吉営業所
八代港の視察