災害対応
6. ソフト対策
(1) 危機管理型水位計等の効果
球磨川水系の河川状況に関する監視体制や住民への情報提供を強化するため、国土交通省と熊本県は令和元年度までに、従来型の河川カメラに加え、危機管理型水位計(国:52基、県:13基)及び簡易型河川監視カメラ(国:23基、県:3基)を増設しました。
危機管理型水位計及び簡易型河川監視カメラは7月3日夜からアクセス数が急増しており、河川の状況を把握するために活用されたことが分かります。特に球磨川と油谷川では、危機管理型水位計で累計5,000回以上、簡易型河川カメラで累計5,500回以上のアクセスを記録しました。
危機管理型水位計のアクセス数(回)
簡易型河川監視カメラのアクセス数(回)
橋梁流失による水位計の故障や流失のほか、豪雨による通信障害なども発生しましたが、避難判断に繋がる避難判断水位及び氾濫危険水位の超過についてはいずれの水位計でも観測することができ、住民の避難行動に役立てられました。
また、危機管理型水位計による水位情報は随時、国土交通省「川の水位情報」サイトや、八代河川国道事務所リアルタイム防災情報サイト「早よ見なっせ球磨川」などで発信を続け、正確な災害リスク情報をリアルタイムで配信しました。
国土交通省「川の水位情報」サイトより球磨川流域の表示画面例
サイトトップページ
熊本県の水位・雨量ページ例
市房ダムの情報例
「早よ見なっせ球磨川」サイトの表示画面例
サイトトップページ
熊本県の水位・雨量ページ例
人吉観測所の情報例
(2) 球磨川水系防災・減災ソフト対策等補助事業の効果と課題
熊本県では、球磨川流域の6市町村(八代市、人吉市、芦北町、相良村、山江村、球磨村)を対象に、球磨川水系の防災力強化に向けた防災・減災ソフト対策等補助事業に取り組んできました。
これらの補助事業について、「防災情報の提供」「避難体制の強化」「地域防災・水防活動」の3区分に整理し、県と市町村が意見交換等を行って今回の豪雨災害における事業の効果を検証しました。
防災情報の提供
6市町村の主な取組 |
- ハザードマップの作成と配布
- ネットワーク型雨量計、河川監視カメラの設置
- 民放テレビ局のデータ放送を活用した防災情報の発信など
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6市町村の状況
(効果と課題)
●:効果 ■:課題 |
- ハザードマップは、6市町村全てで作成・配布。
- うち3団体は、国と県が公表した想定最大規模(L2)の浸水想定区域に対応して作成していたが、残り3団体はL2に未対応だった。
- L2対応の3団体のうち2団体は住民へ配布していたが、1団体は小中学校、消防等のみに配布し、住民には配布していなかった。
- ネットワーク型雨量計や河川監視カメラの設置により現況を把握し、避難情報を発信する判断材料となった。
- 停電や流木等による被災で、使用できなくなった事例もあった。
- 民放テレビ局のデータ放送利用により、インターネット環境のない住民や雨音の影響等で防災無線が聞こえ難い住民にも避難情報等を発信された。
- ネット回線の断線により、行政からテレビ局へ情報送信ができず、情報を発信できなくなった事例があった。
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ハザードマップ(八代市)
テレビ(データ放送)を利用した災害情報の発信(出典:広報 ひとよし)
河川監視カメラ(相良村)
避難体制の強化
6市町村の主な取組 |
- 緊急用ヘリコプター離着陸場の整備
- 避難所で使用するマンホールトイレ、水道等の整備
- 内水対策のための排水ポンプ等の整備、小河川の改修等
- 避難路の整備 など
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6市町村の状況 (効果と課題) ●:効果 ■:課題 |
- 孤立した住民の救助活動に、緊急用ヘリコプター離着陸場が使用された。
- マンホールトイレの整備により、避難所でトイレが故障した際に代替手段として使用された。
- 避難所の水道整備により、孤立した集落において生活用水が確保されたが、停電により一時断水が発生した。
- 想定を超える洪水により、排水ポンプ、発電機が浸水し使用不能になる事例があった。
- 内水対策として改修した小河川の氾濫が発生した事例があった。
- 避難路を舗装整備したことにより、災害後においても救助活動や物資輸送等に使用された。
- 想定を超える洪水により避難路が冠水し、通行に支障を来たす事例があった。
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緊急用ヘリコプター離着陸場(山江村)
マンホールトイレ(人吉市)
内水対策(排水用ポンプの整備)
内水対策(普通河川の整備)
地域防災・水防活動
6市町村の主な取組 |
- 備蓄倉庫の整備、備蓄物資の配備
- 水防活動車、IP無線機等の水防資機材の配備など
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6市町村の状況 (効果と課題) ●:効果 ■:課題 |
- 避難所等における備蓄倉庫の整備、物資の備蓄により、避難直後から住民へ飲料等が提供された。
- 備蓄物資や水防資機材の浸水被災や、備蓄物資の不足により、避難者への提供数を制限した事例があった。
- 備蓄倉庫を整備していなかった集落が孤立し、支援物資の輸送に人員、時間を要した事例があった。
- 水防活動車の配備により、重要水防箇所等の巡視、監視活動、避難の呼びかけなどが行われた。
- 災害後も避難者の移送、物資の輸送等に使用された。
- インターネット回線を利用したIP無線機を配備し、災害情報が役場や消防団等へ一斉送信された。
- 携帯電話等の通信機器が不通となった際の代替通信手段として使用された。
- 基地局の停電等のため、使用できなくなった事例があった
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備蓄倉庫(球磨村)
備蓄物資(芦北町)
光ケーブル2重化によるネットワークの強靭化